車輪の国、悠久の少年少女

車輪の国、向日葵の少女」のファンディスク。
各ヒロインの後日談や本編では1分間も登場していなかった脇役のエピソードなどもあるが、メインはやはり若本こと法月将臣の過去話。
残念ながら「主人公は喋らない」というお約束を乗っ取ってしまっているので、若本の怪演を拝聴する機会はほとんどない。
まあ、若者に若本の声を被せるのは色々な意味で危険なので、仕方のないことか。


余談だが、自分はいわゆる「約束された悲劇」が大好きな性分らしい。
例えば、エストポリス伝記2。
1の100年前の物語なのだが、1の冒頭で主人公らがどうなるかはとっくに明かされているため、どう足掻いても運命が変わることはない。
例えば、Fate/Zero
まだまだ未完の作品だが、やはりこれもまた救われない終わりになる運命。
虚淵師のあとがきに書かれていた「バッドエンド症候群」には、思わず「あ、俺も俺も」と心の中で突っ込みを入れてしまったぐらいだ。
例えば、聖戦の系譜
これは先に挙げた2作品と違って「既に発表された作品の過去話」という形態ではないが、「前編は親、後編は子の物語。後編に親はほとんど登場しません」てな感じで発売前に雑誌に掲載されていた情報だけで、十分予測可能。
駄目な例を1つ。
シルメリア。
これはこれで悲劇なのかもしれないが、歴史の改竄は認められません。


そして、悠久の少年少女。
若若本が権力に屈して老若本になるまでのエピソード+α。
厳密には屈したわけじゃなかったかもしれないが、結果としては同じことで。
若若本がどうなってしまうかは分かっている物語ではあるのだが、息もつかせぬ終盤の怒涛の展開に「ひょっとしたら……」「もしかしたら……」と淡い期待を抱かせてくれるのは、さすがるーすぼーい。
や、まあ、結局老若本になるんだけどさ。


と、若本のシナリオに関しては諸手を挙げて喝采できるのだが、それ以外のシナリオは「まあファンディスクだな」ってな感じの無難な出来。
いや、敢えて苦言を呈すなら、しょっぱい内容。
薄々思ってはいたが、るーすぼーいはギャグや日常を表現するのは苦手なのではないだろうか。
メインは若本シナリオとはいえ、尺はそれほど長くはなかったので、他のシナリオがスカだった点を考えると、少々高い買い物だったかもしれない。