世界ノ全テ-remind of you-

とりあえず全キャラ(4人)クリアしたので。
CGは全部埋まっていないけれど、後は主要なセーブデータをロードして違う選択肢を選べば埋まるでしょう。


システム

一通りの機能は揃っているけれど、クイックセーブがあるのにクイックロードがない、未読もすっ飛ばす豪快なスキップ、見づらいCGモードなど、一通りの欠点も併せ持っている完璧仕様。
選択肢がない一本道のAVGじゃないのだから、せめてCGモードはキャラ別に分けてくれい。
どのキャラが埋まっていないのか分からないし、なんかこう達成意欲がいまいち。
台詞を喋っている時にクリックして飛ばすと、フェードがかかって徐々に小さくなっていくのはいい演出だと思った。
メッセージを読み終えれば台詞が喋り終わってなくても進めるタイプなんで、自分のペースでぽちぽちクリックしていると自動あべしシステムよろしく複数の台詞が重なって独創的な世界を繰り広げたりもするけれど、それもまた一興。


ゲームの進め方は、よく言えば古き良き時代を感じさせてくれる。
放課後になった矢先「屋上」「教室」「廊下」「帰宅する」などという選択肢が出てきた時は、「21世紀にもなって東鳩方式かよ」と心の中で突っ込みをいれてしまった。
もちろん、PS版ではなくPC版。
ある程度の傾向はあるものの、どこに行けば誰がいるのかなんて選択するまで分かりませぬ。
というわけでクイックセーブが八面六臂の活躍を見せてくれるのだが、だからこそクイックロードをつけなかった意図が分からない。
開発していて、デバックしていて必要だとこのスタッフは思わなかったのだろうか。
不便なシステムにするのなら、いっそ「とる」「たたく」「しめる」「つるぎ」「セルフ」「ふしぎな」「ちからが」「くわわる」「くわわる」などという選択肢も合わせて必要だと思うのですが、ケムコニストの方はどうお思いでしょうか。


ストーリー

メインヒロインである智子シナリオが命。
それ以外は一山幾らの娼婦と変わらん。
って勇次郎が言ってた。
ような気がする。
多分。
商品として売るには1キャラだけじゃいけないというのは分かるから、水増しするのはまあ仕方ないんかな。
とはいえ、共通ルートの多さは気になるところ。
そりゃキャラによって多少の違いはあるけれど、2週目で既読スキップをオンにしているとその程度の違いは既読として扱われてスキップしてくれちゃうので、結局2週目以降も共通ルートを見なきゃいけないという素敵仕様。
智子以外のシナリオはシナリオの不整合も目立ち、特定の選択肢(仮に選択肢Aとする)を選ばないと聞けない話なのに、選択肢AもBもCもどれを選んでも、後の共通ルートで聞いたことになって話が進んで行ったり(つまり、1週目で選択肢A以外を選んでいた場合は話がちんぷんかんぷんになる)、文化祭当日の展開が少し違うヒロインのルートでも後の会話で他のヒロインのルートと同じ展開だったことにされていたり。
タイトルでもある「世界ノ全テ」が関わってくるのは智子シナリオだけだし、他のヒロインのルートでもプレイヤーの思惑とは裏腹に主人公が勝手に「でも俺はやはり智子が……」とか言い出しちゃう始末だし、本当にメインヒロイン以外のシナリオはやっつけ仕事がぷんぷん漂っていらっしゃる。
智子シナリオでは一途さを見せ付けてくれるニクい主人公だが、他のシナリオでは優柔不断で鈍感で二枚舌でへたれな浮気男を演じてくれるて別の意味でニクい。


ちなみに、登場するキャラはほとんど(同年代は全員)が関西弁。
西日本に行ったことすらないから関西弁はよく分からないが、全体的なイントネーションも含めてちゃんと関西弁だったような。
全員そっち出身の声優を使ったんだろうか。
だとしたら、力が入っているなぁ。
そのうち津軽弁や南部弁のゲームも出てきたり。
ないか。


で、肝心な智子シナリオはどうかというと、これはよい。
ある程度先は読めるものの二転三転する展開、各所に挿入されているモノローグの意味、中盤以降の智子のデレっぷり、どれも見所満載。
キーワードは「双子」「入れ替わり」「記憶喪失」といったところか。
双子の入れ替わりは古今東西使い古された素材ではあるし、多少の目新しさはあれど智子シナリオも見たことがあるような手法ではあるが、そこに至るまでの流れ、それを取り巻く環境が秀逸で、古臭さを感じさせない辺りは感心。


と、誉めてみたものの、消化不良というか気になるところも多々。
主人公の過去(何でシナリオ開幕当時あんなに捨て鉢だったのか)、兄がただの「本当にいい人」で終わっている点、智子のFreeWillに対する想い、というか他人に勝手に名前を付けられて黙っていいのか智子という点、結局主人公歌ってないじゃんという点、麗司の父親への尊敬っぷり、先生の思惑の分からなさ、etc、あまり説明しすぎて冗長になるのも困るが、説明が無さ過ぎてスカスカになるのも困りもの。
やはり智子シナリオを勢いで楽しむだけのゲームということなのか。


1画面丸々使った立ち絵が特徴的だが、それはCGモードに登録されているところを見ると、普通のCG扱いなんだろうか。
CGモードもCGモードで、総枚数だけ見ると180枚弱あって「おおっ」と思うけど、よくよく見てみると差分が1枚として扱われていたり、レアっぽい立ち絵がCGとして登録されていたりするので、実際のところそう多くはない。
というか、むしろ少ないのではないだろうか。
まあ、全体的に見てレベルは高いと思うし、智子ゲーとして考える分には十分な枚数だと思うので、悪くはないのではないだろうか。


音楽

FreeWill絡みが印象に残ったぐらいで、他は特に。
ボーカルは4曲と多め。
折角演奏するイベントがあるのだから、歌に合わせて演出をつけるだけで違ったと思うんだけどなぁ。
WHITE ALUBMのSODが人気あったのは、劇中のイベントの効果が強かったからだと思うし。
共通ルートにスキップできないイベントが挿入されるのは御免だが、2分弱の歌なんだし、どこかのルートで1曲丸々聞かせるイベントがあった方が印象付けられたと思うんだけどなぁ。
もったいない。


総合

智子ゲー。
他のシナリオは特にやる必要なし。
智子シナリオのために作られた世界観で別のキャラのシナリオを演じようという無理から生じた不整合によるアラが見えてきて、いい気分しなくなるだけ。
全体的に見ると中の中、智子シナリオだけでやめたとすると上の下といったところですかな。